まりという名の猫


私が物心つくころには、すでに彼女はそこにいた。白と黒と茶色が混じった三毛猫で、尻尾の先が奇形で二股に分かれているところに、決定的な特徴があった。名前はまりといった。

田舎の、昔の家だから、猫がいつでも自由に出入りできるようになっていたが、まりは外にでかけると、よく何かを捕まえて帰ってきた。
あるときは、まだ生きている大きな鯉をくわえて帰ってきたのを覚えている。家のすぐ隣に池があって、彼女はそこで鯉を調達したのだろう。
またあるとき、私はまりがひものようなものをくわえて遠くからかけてくるのに気づいた。なんだろうと思って近くによって見ると、なんとそれはヘビであった。私はビックリして、一瞬体が跳ね上がる思いであった。「おい、まりよ、いくらなんでもそんなもの持ってこないでくれよ」

私にはまりと遊んだ記憶がある。わたしは竹の先に釣り糸のテングスを結び付けて、糸の先には煮干しを縛り付けた。まりを呼ぶと、まりはすぐににぼしに気づいて飛び掛かっていった。すると、わたしは、竹の棒を上げて、煮干しは宙に浮く。まりは煮干しを捕れずにからまわりして、どんでん返しで落下。これが面白くて、これを何回も繰り返すのであった。やがて、まりもこれはダメだと悟り、煮干し捕りを諦めてしまうのであった。
今から考えると、私もひどいことをしていたものだと思う。でもその後は煮干しをやって、いっぱいあたまを撫でてやったから、まりは私のことを許してくれていると思うのだ。きっと。。 そうだったらいいな。。






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